終了|2月1日対面実施 CINGAと多文化共生を考える1日
多文化共生社会の実現に向けて今求められているマインドや方向性を考えるイベント「CINGAと多文化共生を考える1日」が2月1日、東京都千代田区の「アーツ千代田 3331」で開催されました。集まったのは、北は北海道、南は九州まで、それぞれの地域で外国人向けの相談体制、社会参画の推進を担う行政や団体の職員、NPO法人スタッフ、日本語教育の専門家など63人。ドイツの移民政策や、豊島区のNPO法人の取り組みから学びを広げた後は、参加者同士が実践例や疑問を持ち寄り、フラットな関係で意見交換しました。対面ならではの熱い議論と新しい繋がりにあふれたイベントの様子をレポートします。
第一部では、昔農英明さん(明治大学文学部准教授)からドイツの移民政策の理念、制度、歴史的経緯やその変容過程について発表をいただきました。統合講習やドイツ文化を学ぶオリエンテーションなどの取組や、移民政策を団体間での意見を吸い上げながら立案推進をする仕組みなどの話があり、日本で移民政策を考える上での示唆に富んでいることを示しました。参加者からは、「どのようにライフスタイルが異なる人に広く講習を提供しているのか」「移民受け入れの推進力となった背景は何だったのか」といった活発な質問が寄せられました。
第二部では、栗林知絵子さん(認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク理事長)から、豊島区地域での活動の紹介をいただき、子どもを地域で見守り育てるための「おせっかい」の人たちの広がりを生み出すコーディネートをしている例が示されました。ランチセッションのリラックスした雰囲気の中、「密な情報連携はどうして可能になったのか」「ネットワークを可能とするチームビルディングの秘訣は何か」という質問が飛び交いました。
第三部ではCINGAからの発信ツールとして「市民ボランティアのための情報箱」が紹介されました。これは、外国人が日本で暮らし、働く中で出会う身近な日本人が、いざという時に確かな情報を得るためのよりどころとなる情報源として役立つことを示し、地域活動の中での活用を呼びかけました。
参考:「キーワードでたしかめる 『日本の制度』」https://www.cinga.or.jp/reports/3291/
午後の部では、日本語学習支援者研修をテーマとし、CINGAから「CINGA日本語学習支援者に対する研修プログラム普及事業」の成果や課題についての発表と、CINGAアドバイザーによるパネルトークがありました。
その後、「地域日本語教育における『B1』につながる『活動』とは?」をテーマにしたフロアディスカッションがありました。会場ではB1という目標レベルの設定に対する批判的検討、地域日本語教育を行う場の在り方、学習環境整備とお金の関係など、さまざまな意見が交わされました。フラットな対話の場とその振り返りの時間は、多様な立場にある人たちの意見とその実践に触れる貴重な場となり、CINGAがこの事業において参加地域と作ってきたような「実践コミュニティ」を体感する場ともなったようです。
閉会後の会場でも参加者同士が積極的に交流し、ネットワークが広がる様子がありました。地域における日本語支援はどうあるべきか、多文化共生社会に向けて何が必要なのか―。参加者それぞれがここでの学びや気づきを持ち帰り、そこでも対話の場を持つことによって、多文化共生への理解と取り組みがより進むことを期待したいと思います。
文責 金子恵妙、川上智子
「CINGAと多文化共生を考える1日」実施概要
日時 2023年2月1日(水)10:30~16:30
会場 アーツ千代田 3331(東京都千代田区外神田6-11-14) ※対面実施のみ
対象 自治体、国際交流協会の職員、NPO、コーディネーター等で各地域の外国人相談や日本語教育の体制づくり、社会参画の推進等を担う方
参加者 浅倉みさき、油川美和、有田玲子、岩品雅子、江場日菜子、大木義徳、小里美津希、加藤早苗、川口直巳、北川淳子、小松愛子、小宮山 嘉隆、小山紳一郎、近藤花雪、坂口ピーター、坂本昌代、式部絢子、鈴木ゆみ、泉水福生、仙波美哉子、立花千明、寳澤 幸、田中久美、田中志穂、谷口真理、千田知宏、千葉偉才也、土井佳彦、内藤真穂、中野 玲子、中河和子、夏目礼子、ニエケひとみ、羽鳥愛、治田三夏男、平野智子、福永綾、藤分治紀、松岡純子、宮下摩子、矢野香織、山岸良馬、吉田聖子、若林風磨、渡戸一郎、昔農英明、栗林知絵子、神吉宇一、田栗春菜、矢部まゆみ、矢崎理恵、山西優二、大久保和夫、太田早苗、金子恵妙、亀井玲子、川上智子、髙田望、寺村優里、西山陽子、新居みどり、深田元美、萬浪絵理
(掲載を許可いただいた方のみ、順不同、敬称略)