#017 知っていますか?母子生活支援施設
週の真ん中水曜日。
こんにちは。専門家相談コーディネーターの青柳です。
みなさんは、「母子生活支援施設」と聞いてどんな施設をイメージしますか? 一般的にはあまりなじみのない施設かもしれません。
以前呼ばれていた名称「母子寮」と聞くと、なんとなくイメージがつくでしょうか。
今回は、外国人の利用もある母子生活支援施設について書いていきたいと思います。
母子生活支援施設は児童福祉法の定められた施設です。
児童福祉法
第三十八条 母子生活支援施設は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を入所させて、これらの者を保護するとともに、これらの者の自立の促進のためにその生活を支援し、あわせて退所した者について相談その他の援助を行うことを目的とする施設とする。
法律だと固い言葉が並んで難しいですね。
ざっくりいうと、18歳未満の子供を育てている母子家庭や、何かの事情で離婚届けができていないけれど実質、母子家庭となっている母親と子供が一緒に暮らすところです。そこで、援助を受けながら心身を休めて、自立のための生活を目指します。
母子の多くは家庭内での暴力やトラブルなど、様々な事情により生活が立ち行かなくなって入所となります。シェルターなどの婦人保護施設から入所する場合もあります。
子どもを抱えて住む家を出なければいけない状況になったり経済的に困窮しているときに母親が一人で心身の健康を回復したり、住まいや仕事を探すのは容易ではありません。そんな時、住む選択肢の一つとして母子生活支援施設があります。
入所は福祉事務所に相談して申し込みます。利用料は所得に応じた負担で、水道光熱費や食費は自己負担です。
外国人相談や親子相談に実際に対応していると、母子生活支援施設への入所のニーズをとても感じます。ただ、この施設に入所すると子ともの学校のことや仕事のことなど環境変化を伴うことになるため、利用を躊躇するケースも見てきました。
一方で、地域によって福祉事務所が積極的に入所を勧めておらず、入所を希望して相談したけれど、窓口で簡単に断られたという話も聞きます。
外国時特有の課題として、在留資格の問題が絡むことがあります。
永住者であれば、活動の制限や在留期限がありませんので、日本人と同じように利用できます。同じく活動に制限のない定住者や日本人の配偶者の場合は、置かれた立場や在留期限が迫っている場合など、すぐに対応を検討しなければならないケースもあります。
また、就労資格を持つ人の配偶者や子供である「家族滞在」の在留資格にも在留期限があり、夫の就労資格が基盤となって日本に在留できていることから、在留期限とその後の生活をどうするのか検討が必要です。
以前、自治体の生活困窮窓口の方からいただいた相談で、「家族滞在」の母子が身体的、経済的DVを受けて一時保護されているケースがありました。
お金をほとんど持っておらず、児童手当などもすべて夫に振り込まれているため、経済的に困窮して受け入れてくれる母子生活支援施設が見当たらない、とのお話がありました。このケースは担当の職員の方が尽力されて、このような状況でも受け入れてくれる施設を見つけることができました。
このケースで難しい点は、「家族滞在」は生活保護をほぼ受ける可能性がないということです。永住者や定住者、日本人の配偶者であれば生活保護や公的な福祉資金などの利用を申請する選択肢がありますが、「家族滞在」だとすべての公的資源を使えるわけではなく、都度、検討をしていく必要があります。
「外国人対応者のための相談室」では、このような難しいケースの相談も寄せられています。
現場で外国人から相談を受けている福祉の担当者の方には頭が下がる思いです。在留資格による制約がある中、都度、今できるベストな選択肢は何なのか、今後どのようなことが予測されるのか、を一緒に考えています。
CINGAが実施している、「外国人のための遠隔無料専門家相談会」と、「外国人対応者のための相談室」の詳細は以下の「詳細はこちら」ボタンよりご覧ください。